ライフ・キャリアイノベーションと箱根駅伝

ライフ・キャリアイノベーションと箱根駅伝

転機を好機に変える「働楽人」

 

私の新年は、ニューイヤー駅伝と箱根駅伝のTV観戦でスタートする。
以前、市民ランナーとしてレースに出ていたこともあるが、
ゴールを泥臭く目指すひたむきな思いや
試合で思うような結果を出せない悔しさを感じることを通して、
自分の挑戦意欲を刺激する新鮮なエネルギーを受け取っている。
「よしっ!私も!」とスイッチを入れる感覚だ。

実業団の選手も大学生も、この舞台の背景には、それぞれのドラマがある。
スター選手としてオリンピックを狙う者、
大学卒業後は競技生活に区切りをつけ、ビジネスパーソンの道に進む者、
実業団からスカウトを受ける者、
怪我のために強豪実業団チームから戦力外通告を受けてビジネスマンに転身した者、
選手として走ることはできないが、サポートに徹してチームを支える者、
突然の病で戦列を離れた後、競技に再挑戦する者・・・

自明の理ではあるが、競技において全員がトップになることはできない。
3位以内や入賞、シード圏内を目指すチーム・個人もある。
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ビジネスの世界でも全企業が業界トップになれるわけでなく、
2位の戦略があれば、規模ではなくオンリーワンを狙うニッチ戦略、
働きがいNo1を目指す企業、100年続く企業があっても良い。

私たちのキャリアにも同じことが言える。

どのようなスポーツでも、選手としてのキャリアには転機が訪れる。
同様に、私たちのキャリアにおいても、いくつかの転機を乗り越えながら一生を過ごしていく。
そして、転機の乗り越え方に個性と人間性が現れる。

転機には、外的要因と内的要因がある。
外的要因としては、異動、転勤、出向や会社の方針が変わりプロジェクトが無くなる、結婚、離婚、出産、介護などがある。
内的要因としては、転職や自己申告による異動、期待していた昇進・昇給が実現しないかったことなどがある。

転機には気持ちの波が訪れる。
努力が報われるハッピーな転機だけでなく、努力しても成果が出ない「谷」の時期もある。
苦しい転機には、不安を感じたり、諦めたり、不遇を嘆くこともあるかもしれない。

そんな苦しいときに自分を支えてくれるものは何だろう?
決めたことをやり抜く覚悟と積み重ねてきた準備への自信、
そして、支えてくれた人たちへの感謝ではないだろうか。

逆境の時もハッピーでいることは難しいが、
逆境ですら「挑戦・成長の好機」と捉えられるのが「働楽人」である。

マラソンランナーの高橋尚子さんは、怪我で走れない時期に
高校陸上部の恩師・中沢正仁氏から贈られた以下の言葉に支えられたという。

「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」

樹木

世界でも例を見ないスピードで少子高齢社会に突入し、
「生涯現役時代が到来」と言われている日本で働く私たちは、
今後、否応なくキャリアの転機を経験することになる。

多くの企業の現状では、50代以降に以下の変化が待っている。
50代で役職定年を迎え、役職と報酬がダウンする。
60歳以降は再雇用契約になり、これまでの5-6割程度の年収になる。
※再雇用制度
60歳でいったん退職し、嘱託社員として再雇用する制度。
延長雇用あるいは再雇用制度は、9割程度の企業が導入している。
※定年延長
大和ハウス工業、サントリーホールディングス、ホンダ技研など一部の企業では、
65歳まで定年を延長する動きもある。

一方で、定年以降の暮らしについては以下の予測がある。
年金の受給開始年齢が後ろ倒しになり、近い将来、70歳からになりそうだ。
年金受給額は低下の一途を辿っている。
平均寿命が延び、65歳定年退職後、20年近くを暮らすためのマネープランが必要になる。
(年金と退職金だけで生活の質を維持するのは難しいかもしれない)

つまり、外的要因による転機に対応することが求められる。
また、健康寿命(認知症などにならず健康的に生活できる年齢)が70代まで伸びている今、
社会と関わりを持ち、役に立っている実感を持ち、自分らしく充実した人生を送りたいと
願う人が増えている。

では、世界が経験したことのないこの変化を好機に変えて充実した人生を送るために、
私たちは、どのような準備を行えばよいのだろう?
目の前のことに一生懸命取り組むだけでなく、戦略的な努力を積む必要がある。

定年間際に考えるのでは間に合わないことも多い。
できることなら、40代から意識的にキャリアイノベーションの準備をして欲しい。

「働楽人」に必要なライフキャリアイノベーションとして、以下の戦略的努力を提案したい。

  1. 自分らしく充実して働き続けるための武器を持つ
    40代から、意識的に独自の強み=専門性を磨いて存在感を高める
    50代には、60歳からのライフキャリア(生き方、働き方)をデザインして準備を行う
    ※今の会社で長期に亘り必要とされる道を選ぶ、または、プチ起業や個人事業主を目指す選択
  2. お一人様仕事力を高める
    60代以降にスタッフ職あるいは専門職になる人は、自分で仕事を完結させる仕事力が求められる。
    個人事業主になったりスモールビジネスを起業しても同様。
    仕事を効率的に進めるためのIT能力、ペーパーワークができるようにする。
  3. 問題解決力を高める
    書籍やセミナーなどで学習し、現場の仕事に転用して「使える能力」に高める。
    現場の課題解決力が高ければ、それだけで人材としての存在価値が高まる上、
    自身の人生課題の解決力も高まる。
  4. 人的ネットワークを充実させる
    社内や業界限定のネットワークではなく、専門領域や興味のある分野のNPOなどの団体に所属し、
    社外ネットワークを形成する。
    専門力を磨くこともできるし、従来のネットワークでは得られない生情報を得られるかもしない。
    何よりも、社内や業界の常識に捕らわれない柔軟なものごとの捉え方が鍛えられる。
  5. 人生を充実させる戦略を立てるための情報収集を行い、スモールステップを踏み出してみる
    10年前倒しで、自分が望む暮らしを実現するために必要な情報を収集する。
    例えば、60歳以降の暮らし方を考えるなら、50歳から情報収集を開始する。
    インターネット検索で、かなりの情報収集が可能だ。
    65歳以上の再就職マーケットで求められる知識やスキルは何か?
    65歳以上で個人事業主になった人は、どのような働き方をしているのか?
    地方に移住したいなら、移住者の支援にはどのようなものがあるのか?

文責:代表理事 矢野里枝
 

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